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不足しがちなビタミンDが起こす5つの症状と対策

症状が分かりにくいビタミンD欠乏症の5つの症状とビタミンDを食事や栄養素から摂取する具体的な対策方法を最新研究論文を基に解説します。

ビタミンDとは

筋肉や骨、神経、免疫系など、体のあらゆる部位で重要な役割を果たす栄養素がビタミンDです。健康を保つためには、ビタミンDの適切な摂取が不可欠です。

科学誌『ニュートリエンツ』の研究論文によれば、特に運動する人はビタミンDを適切に摂取することで、疲労骨折や骨破壊のリスクを低減できるとされています。カイザー・パーマネンテの家庭医でスポーツ医学専門のアレックス・マクドナルド博士は、「ビタミンDの主な役割は、骨の健康を維持するためのカルシウムとリンの吸収促進をサポートする」と説明しています。

ビタミンDはカルシウムとリンの吸収促進サポート以外で重要な役割があります。ビタミンDは脂溶性ビタミンであり、男性ホルモン(テストステロン)としても機能します。「反応を引き起こすために脳に信号を送り、他のホルモンに影響を与えます」と説明するのは、スポーツ選手や活動的な家族を専門にサポートする公認スポーツ栄養士のケリー・ジョーンズさんです。実際、米国立衛生研究所(NIH)によると、ビタミンDは筋肉を動かし、脳と体の間で神経がメッセージを伝え、免疫システムが体内の細菌やウイルスと戦うためにも必要です。

しかし、残念ながら多くの人々がこの「日光のビタミン」を十分に摂取できていません。ジョーンズさんは、「屋外で過ごす時間が長い人は、太陽から必要なビタミンDを得ていると考えるかもしれませんが、屋外で運動する人に関する研究結果や定期的に血液検査を受けている屋外スポーツのアスリートを直接見てきた経験から、多くの人がビタミンD不足であり、臨床的に欠乏している場合もあります」と述べています。

ビタミンDの十分な摂取を確認する唯一の方法は、医師に診てもらい血液検査を受けることです。しかし、ビタミンD欠乏症の兆候に気を付けながら、これから紹介する方法で必要量を確保することも大切です。

ビタミンD不足は血液検査で分かる

ビタミンDの充足状態は、血液検査で血中の25-ヒドロキシビタミンD濃度を測定することで評価されます。具体的には、

  1. 30ng/mL以上で充足
  2. 20~30ng/mLで不足
  3. 20ng/mL未満で欠乏

と判定されます。この値には、動物(ヒトを含む)由来のビタミンD3と植物由来のビタミンD2が含まれています。

ビタミンDが不足している時の5つの症状

ビタミンD欠乏症の症状は特別なものではなく、無症状であることが多いため、欠乏しているかどうかを判断するのは難しいとマクドナルド博士は説明します。ただし、症状が現れた場合には、以下のような可能性があります。

  1. 疲労感や倦怠感
  2. 筋肉の痛み、脱力感、筋肉の痙攣
  3. 手や足のしびれ
  4. うつ病など、気分の変化
  5. 病気に罹りやすい

ビタミンDは筋肉の動きや神経が体全体にメッセージを送るのを助けるため、不足するとこれらのプロセスが遅くなり、疲労や筋力低下、しびれが起こることがあります。ビタミンDと気分の関係はまだ完全には解明されていませんが、研究によると、ビタミンDは脳が神経細胞の成長と移動に必要な物質を放出するのを助けることが示唆されています。これらの物質には脳由来神経栄養因子(BDNF)も含まれており、うつ病のリスクを低下させる効果が期待されています。

さらに、ビタミンDの欠乏がより深刻になると、骨疾患を引き起こす可能性があるとジョーンズさんは語ります。具体的には、子供ではくる病、成人では骨軟化症が挙げられます。これらの病気は、ビタミンDが不足することで骨が食物からカルシウムとリンを吸収できず、骨が柔らかく弱くなることで発生します。

さらに、2021年3月に医学誌『メディシナ(カウナス)』に掲載された論文によれば、疲労骨折はビタミンD値の低下が骨の健康に影響を与えている兆候かもしれないと指摘されています。マクドナルド博士は、「疲労骨折を起こすほどの状態であれば、包括的な代謝検査を受けてカルシウムやビタミンDに異常がないかどうかを確認する必要があります」と話しています。

必要なビタミンDの摂取量

米国立衛生研究所(NIH)によると、すべての成人におけるビタミンDの一日あたりの推奨摂取量は15μg(マイクログラム)、または600国際単位(IU)です。一方で、米内分泌学会は十分な日光浴をしていない人に対し、ビタミンDの濃度を適切な範囲に保つために一日あたり1,500~2,000IUを推奨しています。

公認スポーツ栄養士のジョーンズ氏によると「ビタミンD値が50ng/mL以下の人には5,000IU、夏から秋にかけて50ng/mLを少し超える程度なら1,000〜2,000IUのビタミンD摂取を推奨しています」とのこと。しかし、適切な用量を見つけるためには、医師または登録栄養士に相談することが重要です。

ビタミンD不足になる可能性ある人

日光はビタミンDの生成に欠かせないため下記の方は特に不足しがちになります。また高齢者は皮膚の能力が低下するのでビタミンD不足のリスクが高くなります。

  1. 室内で仕事をする人
  2. 日焼け止めをよくする人
  3. 肌の露出が少ない人
  4. 寒い気候に住む人
  5. 高齢者
  6. アスリート

外で運動していたり規則正しい食事を摂っている持久系アストリートは不足と無縁と考えれますが研究によると一般の方より体内に貯蔵されたビタミンDを使い切ってしまう可能性があるため欠乏症になりやすいと言えます。

さらに、一部の疾患が存在する場合、ビタミンDの体内貯蔵を維持することが難しくなる可能性があります。たとえば、炎症性腸疾患やセリアック病などの胃腸(GI)疾患を患っている人は、食物からビタミンDを吸収する量が制限されるおそれがあります。マクドナルド博士によれば、下剤、ステロイド、コレステロールを下げるスタチン、抗てんかん発作薬のフェノバルビタールなどの薬物も、ビタミンDの値を低下させる可能性があるとのことです。

ビタミンD不足を対策するための食事

ビタミンDが摂取できる食材は限られています。特に魚介類から多く摂取することができます。

ビタミンDは重量(μg)で表示されます。μgは、mgの1/1000の量です。

  1. 鮭 1切(約80g)25.6μg
  2. 秋刀魚 1切(約100g)11μg
  3. ブリ 1切(約80g)6.4μg
  4. 卵 1個(約65g)2.5μg
  5. エリンギ 1/2パック(約50g)0.6μg

まとめ

ビタミンDは健康な身体を保つために重要な栄養素です。不足になっていないか健康診断や血液検査で注意して確認しましょう。また意識して魚を食べたりサプリメントで補いビタミンD不足をケアしましょう。

参考文献
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7071499/